引き続き、Star☆T9thシングル「Woman」の楽曲について、トータルプロデューサーの清水雅人さん、サウンドプロデューサーの藤村のりおさん、深井勇次さんにお話しを伺いました。
前半 制作経緯「Woman」について はこちら
――続いて収録曲「ドッペルゲンガー」について、作曲・編曲の深井勇次さんに伺います。この曲の発想、制作過程はどんなものでしたか?
深井:変な話、リード曲狙いではなかったので少し冒険させて貰いました。サビに向けてスピード感を保ちつつ、一気に落としてやろうと。初めのサビでハーフテンポになる曲ってあまり無いじゃないですか!?この違和感や癖は、まさにCDの2 曲目って感じになりました。
――深井さんの曲の一番の特徴は、キャッチーで耳に残るメロディだと思いますが、今回キャッチーでありつつ様々に変わっていく展開や転調、アバンギャルドと言っていいBメロなどこれまでにない特徴を感じました。この辺りは意識してか無意識にかどちらですか?
深井:全体像はあらかじめイメージ出来ていましたが、転調に関しては当初のサビのメロディーが低いなと思ったのであげてしまおう、と(笑)。つじつまを合わせるために「そっちこっちどっちだって」のメロを付け加えました。結果、調が行ったり来たり、そっちこっちどっち?って感じになりました(笑)。
Bメロは狙い通りです。ボカロとかの曲は良くあるのですが、歌詞を詰める事でメッセージ性の強い曲になるんです。
清水Pなら良い詩をあててくれると確信しておりましたので!
――作曲、アレンジで意識したところ、特に聴いてほしいところは?
深井:いつもそうなのですが、同じメロでもアレンジの繰り返しはなるべくしないようにしてます。飽きずに聴いてもらえるように、繰り返し聴いてもらえるように。
2Bのカオスなアレンジからサビで解放される感じは個人的にも気に入っています!ギター(新堀氏)も炸裂していますしね!
そして今回も色々なところに罠が仕掛けてあります!歌ってみるとその罠が分かりますので、是非歌って欲しいですね!
――ボーカルレコーディングについて
清水:リード曲「Woman」はソロパートは8人を選抜してレコーディングしてますが、カップリング曲2曲は現在の14名のメンバーを7人ずつに分けてレコーディングしました。若手のボーカルスキルも大分上がってきてますし、みんなソロパートが歌えるようになってきたかなと思って。
どう分けたかですが、全メンバーにどっちが歌いたいか聞いたんです、偏ったら最後はこっちで調整してもしょうがないかなと思いながら。そしたらちょうど7人ずつ希望して、バランスもいい感じで。なので、2曲のボーカル割り振りは本人たちの希望どおりです。
――「ドッペルゲンガー」の作詞について
清水:この曲は一番早くデモをいただいたと思います。深井さんらしい曲だなというのが第一印象ですね。とってもポップでキャッチーでロックだなと。
作詞に関しては、どうしても深井さん提供の前作「2021」の印象が強いので、今回のデモを聴いた時もメッセージ感を込めたいっていうか、こぶしを挙げて歌うイメージがあったんですが、「2021」の二番煎じにはしたくないってのもあって。
これもデモの初聴を素の状態で臨んですっと固めたんですが、転調も多いし、展開もどんどん変わっていくし、サビはいつもどおりのとてもキャッチーなメロだけど、Bメロはとてもアバンギャルドで、、、なので2つの別のストーリーが進んでいく感じとかどうかなと思って、「ドッペルゲンガ―」という言葉が浮かんだんです(黒沢清監督の映画「ドッペルゲンガ―」を思い出して)。響きが合ってるなと思って、こちらもタイトルを先に決めました。
タイトルだけ決めて、「Woman」と同じく数週間頭の中で転がして、「Woman」と一緒に書きました。ただ書き方は「Woman」とはまた違ってて、Aメロを2つに分けてサビも分けてここはポジティブここはネガティブって感じで構成をまず作って、そこに1つずつ歌詞をはめていくという作業でした。Bメロはどうしようか悩んだんですが、ちょうどその頃椎名林檎さんの「ニュートンの林檎」っていうベストが出たところでよく聴いてて、あの魑魅魍魎(ちみもうりょう)感のある歌詞っていうか(笑)、漢字がばぁーっと並んでるイメージを拝借してポジティブとネガティブの単語をとにかく書き出して、並び替えたりしながらって感じで作りました。
それで、仮歌入れて深井さんに返したら「ちょっとダーク過ぎませんか、、、」と返事があって。深井さんの曲って私にはすごくロックなイメージがあって、メジャー/マイナーのキーもどちらともとれる感じもあって、ついダークな感じにしたくなるんですよね。「15センチ」も当初の深井さんの仮詞はもっと軽い恋愛ものだったんですが、ダークな感じに直したっていう経緯もありましたし。
それで、「冒頭のメロにも歌を入れたい」という深井さんの要望もあって、深井さんが「そっち こっち どっちだって」という詞を入れてくれて。少しはダークさが薄れると思いますが、、、って。もともとAメロとサビは言葉自体はあまりひねらずわかりやすくしようと思って書きましたので、全体の雰囲気に違和感なくはまってると思ってそのまま使わせてもらいました。
――収録曲「私の好きな人には、好きな人がいる」について、作曲・編曲の藤村のりおさんに伺います。曲の発想、制作過程はどんなものでしたか?
藤村:当初、1曲はバラードでいこうという案も出ていて、昔作ってストックしてあった曲とかも清水さんに聴いていただいたり、バラードな感じで新たに作った曲のデモも聴いて貰ったりしてたのですが、「Woman」が先に出来ていて、清水さんと「Woman」のテンポをどーするかみたいな話の中で、ミックスコールはこの曲だと入れにくいですねみたいな話になり。やはりライブだとバラードより盛り上がる曲の方がやりやすいと言うアドバイスももらい、バラードで作っていた曲を、ガラッとアレンジを変えて清水さんに聴いてもらったら、こちらの方がいい!と言っていただいたので、激しめアレンジで作り直しました。そこからは、もう、得意なジャンルなのでババッて作り終わった感じです^_^
――特に聴いてほしいところは?
藤村:なので、逆にファンの皆様にこの曲にミックスコールを入れて貰ったところを聴いてみたいです!それで完成みたいな。
――ボーカルレコーディング、ミックスダウンについて
藤村:曲のキーが高いので、みなさんには頑張っていただきました。その分勢いが出たかなと思います。ミックスに関しては、ストレートに真っ直ぐ飛んでけーって感じで(笑)、ミックスしました。
――楽曲決定の経緯を清水さんにもお聞きします
清水:藤村さんもお話しのとおり当初バラードだったんですが、「バラードの激しめアレンジも作ってみましたがどうでしょう?」ってとりあえずサビ部分だけのデモが送られてきたんです。それがとってもよくて。これこそ多分藤村さんのストライクゾーンな曲、アレンジだろうなって思って。バラードアレンジもとっても良かったんですが、やっぱり1曲ご自身の得意なところやって欲しいとも思って「こっちでお願いします」って返事をしました。藤村さんのストライクゾーンは、J‐POP/90年代ビジュアル系~00年代バンド系だと認識してるんですが(私はその辺りあんまり詳しくないんですが、、、)、マイナーコードの泣き節というか、イントロ等のストリングス感とか、ドラムの音とか。ベースも生で依頼して入れられてますしね。メンバーは「今っぽい」って言いますが、確かにBiSHさんの曲なんかは同じ雰囲気があって、多分ルーツが一緒なんだろうと思います。この曲ならライブで沸くな~ってまず思いましたね、ライブでヘビロテする曲が増えたなと。
――作詞について
清水:「Woman」「ドッペルゲンガー」が期せずしてメッセージ性の強い詞になったので、この曲はラブソングにしようとまずは思いました。究極のポップソングと言ってますのでラブソングがないわけにはいかないので。ただ、実はStar☆Tってラブソングはそんなに多くないんです。アイドルって恋愛禁止のイメージが強いと思いますが、それでがっつりラブソングを歌うのって、、、と思うところもあって。例えばAKB48さんが、そういう中で男の子目線の歌詞を歌うってのは1つの策ですよね。Star☆Tも、10代のスクールラブ的な恋に恋する感じにしたり、ファンタジーな世界観にしたり、ラブソングは色々工夫してきました。
なので、今回のようながっつりラブソング、それも失恋ソングは初めてですね。メンバーの年齢層も上がってますし、そろそろこういう曲が1曲あってもいかなと思って。
「私の好きな人は他の人が好き」っていうモチーフを決めて頭から一気に書き上げた感じですね。小説、映画、歌、マンガなどでこれまでに繰り返し描かれてきた永遠のテーマです。途中で「私の好きな人には、好きな人がいる」をタイトルにしてしまえば、歌詞で状況を説明する必要がないってことを発見しまして(笑)、そこからは一気に書けました。
2か所歌詞リスペクトがありまして、1つ目は「あなたの影追いかけて いつの間にか探してる こんなとこいるはずもないのに」の部分で、いわずもがな山崎まさよしさんの「One more time,One more,chance」です。昨年12月に牧野凪紗のソロワンマンライブをやったんですが、そこでこの曲カバーさせてもらいまして、改めていい曲だなと思って。
2つ目わかりますでしょうか?「歩く人の波はどこまでも無口で」の部分です、石川さゆりさんの「津軽海峡冬景色」から。作詞は阿久悠さん、昭和を代表する偉大な作詞家のおひとりですね。2曲ともどこかこの曲とも雰囲気が似ていると思いませんか?
もう1つエピソードを。レコーディング時に、間奏部分にあるリフレイン「会いたい、会えない」と同じメロを一番最後、アウトロにも入れたいって藤村さんが言われて、歌詞どうしましょうって。「えっー?ちょっと外で考えてきます」って席を立った時に「あ、そりゃここは『さよなら』だな」ってふっと浮かびまして、そのままレコーディングしました。その場で決められて、今回私が作詞を担当して一番よかった点ですね(笑)。
――最後に清水さんよりシングル「Woman」についてのまとめ、シングルをお聴きの方にメッセージを。
清水:今回のシングルは“力いっぱい振り切った!”というのが心境です。サウンド的には三曲三様、きめの細かいクオリティ/世界観が構築できてると思いますし、詞については、あらかじめ3曲で統一的なテーマは決めずに1曲ずつ曲に向き合って書いたんですが、完成してから振り返ってみるとよりパーソナルな、内面的な内容の3曲になってて、そういう意味でも“ポップス”になってるなと思います。
メンバー全体も年齢層が上がって、グループも9年目を迎えて、より大人になった、表現力も上がった、我々プロデュ―ス側のスキルも上がった、そういうもろもろが反映されて、言い訳や説明のいらない、―と言いつつここで色々お話してますが(汗)、、、現時点でStar☆Tが出せる“究極のポップス”を自信を持ってお届けできたかなと。
現在ライブやイベントが全くできない状況で、この曲達をステージでやれないのが残念なんですが、、、ひとりでじっくり聴いていただいても良さがわかる3曲だと思いますし、もちろんライブ/イベント再開したらぜひステージでのパフォーマンスも見届けて欲しいです。
あと、type-BのボーナスDVDには「Woman」のミュージッククリップと合わせてStar☆TSOLO10の10曲のミュージッククリップも収録しました。ソロということで、これまでのグループとしてのミュージッククリップにはない様々な挑戦もしてて飽きない内容になってると思いますので、そちらもどうぞお楽しみください。
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プロデューサープロフィール
藤村のりお/「Woman」「私の好きな人には、好きな人がいる」作曲・編曲担当
専門学校卒業後、レコーディングエンジニア、イベント・コンサート等のPAなど行う。現在は、他の仕事をしつつレコーディング、ミックス、PAエンジニアとして休みの日に活動中。現在Vox Box Studio契約エンジニア。Star☆Tにはこれまでに「恋するマーメイド」、「STORY」(牧野凪紗ソロ)、「私だけの夢」(朝空詩珠紅ソロ)を楽曲提供。「きまぐれストーリー」「15センチ」のギターを担当。
深井勇次/「ドッペルゲンガー」作曲・編曲担当
Star☆Tの初期より楽曲のレコーディング、ミキシングを担当。レコーディングエンジニア歴17年、メジャーアーティストの録音も担当。Star☆Tにはこれまで「きまぐれストーリー」「15センチ」「2021」を楽曲提供。藤村のりお氏とは専門学校時代からの朋友。
Vox Box Studioサイトhttp://voxboxstudio.com/
清水雅人/「Woman」「ドッペルゲンガー」「私の好きな人には、好きな人がいる」作詞担当
2011年Star☆Tを立ち上げ、以後運営・プロデュ―スに携わる。これまでのStar☆Tでの楽曲制作は「この街に生まれたから」「あなた探して矢作川」「安全運転は愛なのよ」「Swinging Star Forever」「癪にさわるけどshiny day」「豊田よいとこ音頭」「Start&Smile」「ブルーヴァレンタイン」「Bcause I was born in this city」「パパとママの物語」「叫べっ!」「君に夢中ということは、君が必要で、愛しているということ」「夏をあげる」「2021」(作詞)「赤く塗れ、焔を焦がせ」(牧野凪紗ソロ 作詞)「真昼のノワール」(牧野凪紗ソロ)「グッドバイ」(牧野凪紗ソロ)「ご当地ソング」(作詞)「好きじゃんね。」(作詞)「私たちの散歩道」(作詞)「この世界にソウルを放て」(近藤実希ソロ)