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【楽曲解説】プロデュ―サ―によるシングル「Woman」楽曲解説 前半(制作経緯、「Woman」について)

Star☆T9thシングル「Woman」の楽曲について、トータルプロデューサーの清水雅人さん、サウンドプロデューサーの藤村のりおさん、深井勇次さんにお話しを伺いました。


後半「ドッペルゲンガー」「私の好きな人には、好きな人がいる」について はこちら


 ――まずは、清水プロデューサーにお聞きします、シングル制作の経緯は?


清水:Star☆Tの1年前からの楽曲制作活動の流れを説明すると、昨年2月に8thシングル「ご当地ソング」の発売があって、5月からStar☆TSOLO10(スタートソロテン)というプロジェクトを行いました。これは、メンバーの内10人を選抜してソロ曲10曲を配信限定で発表する、楽曲制作は地元豊田ゆかりのアーティストさん10組に依頼する(アルバム「メロウ」の第2弾的コンセプト)というものでした。Star☆TSOLO10は本当に幅広いジャンルの10曲が揃って、地元アーティストさんとの繋がりも改めて強くなって、プロデューサーとしてもすごく楽しかったですね。それで、さあ次はやっぱりCD発売だなと、9thシングルを発表したいなとなりました。


――楽曲制作依頼の経緯は?


清水:Star☆TSOLO10の10曲について私が優越をつけるのはよくないですが(笑)、これまでに「恋するマーメイド」「STORY」(牧野凪紗ソロ)制作の藤村のりおさんに提供いただいた朝空詩珠紅ソロの「私だけの夢」が個人的にすごく好きで。みなさんからいろんなジャンルの曲をいただく中、唯一のアイドル曲で、それもちょっとレトロ感というか歌謡曲感もある曲で、「次のStar☆Tの曲に回したいな」って思ったくらいで。


一方、これまで「きまぐれストーリー」「15センチ」「2021」制作の深井勇次さんはStar☆TSOLO10の時にちょっと連絡のミスがありまして(汗)、10組の中に入れられなくて。それで、ご本人から「次は作りますよ」って言っていただいて。


で、前作「ご当地ソング」は、菊地卓也さん松中啓憲さんに収録曲全体のサウンドプロデュースをしていただいた、Star☆TSOLO10は10組のアーティストに提供いただいた、という流れの中で、次のシングルは前作シングルと同じく1組に集中してプロデュースしてもらう形にしようと。藤村さんと深井さんは音楽系の専門学校の同級生でらして、お二人に楽曲制作、サウンドプロデュースをお願いしたいと。


――シングルコンセプトについて


清水:前作「ご当地ソング」は“ご当地ソングばかりを4曲収録する”というかなりコンセプチュアルな内容で、サウンド的には現在のJ-POPの先端にも目配せして欲しいというお願いをしましたが、Star☆TSOLO10を経て、前作からの反動もあって、今回はそういう制約は一切なしでいきたいなと。


これはデビュー当時からですが、Star☆Tの楽曲については、アイドル曲を作っているというよりもポップスを作っているという感覚が強くて(もとよりアイドルにそれほど詳しくなかったこともありますが、、、)、今回はシンプルに、とにかく“究極のポップス”を目指したいと。藤村さんと深井さんなら応えてくれるだろうと。なので「今回は特に要望はありません、ただ究極のポップスをお願いします」とお話しまして。まあでもそれが一番無茶ぶりな要望だったと思いますが(笑)。


なので、これまでシングルは4曲収録をマストにしてきたんですが(CDは収録4曲までがシングル、5曲以上収録でアルバムになる)、今回は遊びの曲はなしでいいので、3曲か2曲でもいいですってお願いしました。消費税率も上がったので、曲数少ない分この機会に税込で500円とか1,000円の価格設定にしたいというのもあって。


また、2019年度初頭に年度計画をメンバー含めて相談した時に、久しぶりに全国ツアーをやりたいって声があったので、シングルプロジェクトの1つを全国リリースイベントツアーにして、1月~3月と最近では長いリリイベ期間を取って、発売も4月1日として。


それと、配信限定だったStar☆TSOLO10曲もやっぱりディスクで発売して欲しいという要望もあったので(ファンからも楽曲提供アーティストさんからも)、SOLO10のミュージッククリップのDVDをtype-BのボーナスDVDにして、、、という感じでおおよその概要を決めました。


昨年9月におふたりにコンセプトとともに楽曲制作依頼をしまして、12月にボーカルレコーディング、1月よりリリースイベントツアー、4月1日発売となりました。


 ――それでは、楽曲について順番にお聞きします。まずはリード曲「Woman」について。作曲・編曲の藤村のりおさんに伺います、この曲の発想、制作過程はどんなものでしたか?


藤村:いつもそうなのですが、まず作りたい曲のイメージから考えています。色というか、匂いというか。今回、お話をいただいたのが9月ごろだった気がしますが、発売は春ということで、春をイメージして、何か新しいことを始める、動き出す、一歩踏み出す、色はピンク!みたいなイメージで取り掛かりました。


――これまでの提供曲のどれとも違う、新しい展開の曲と感じました。その辺りの意識は?


藤村:イメージからですが、新しい一歩みたいな大まかなイメージがあったので、自分が作ったことのないような曲を作りたいという思いは少なからずあったと思います。でも、自分の中で絶対に譲れない、ポップさ、耳に残るとか、口ずさみたくなるというか、そういったメロディーだったりリズムだったりは、大切につくりました。


――ストリングスがとても印象的です。また、サンバのリズムやスペースの多い感じのアレンジも印象的でした。メロを先に作られたのか、アレンジのイメージがまずあってトラックを作られていったのか


藤村:自分はいつも、メロ先です。そこから、イメージを膨らましアレンジしていく感じです。いつもは、いろいろな楽器を重ねて、壁のように隙間なく作っていくのが好きなのですが、今回は色々足してみた後で、何か違うと感じました。新しい一歩っていうのは、不安もとても多くて、そこから色々隙間を埋めていく、という感じを出したかったというか。なので埋めずにとっておこうと。


――ボーカルレコーディング、ミックスダウンについて


藤村:今回初めてレコーディングから参加させていただきました。まず、とても楽しかったのと、みなさんとても聴き込み練習をしてきてくださった感じで、驚きました。パート分けも特に考えずに挑んだので、皆さんそれぞれフルコーラスを歌っていただいたので時間も使ってしまいすみませんでした(^_^;) ミックス時にもその中から誰のパートを使うかかなり悩みました。ただ今回のレコーディングで、みなさんのそれぞれの個性もわかったので、今後また機会あれば、その個性をもっと引き出せるような曲を書けるような気がします!


――最後に、ここを聴いて欲しいというところはありますか?


藤村:Star☆Tさんの歌声を聴いていただければ十分です!


――清水さんにお聞きします。楽曲を聴かれた時の印象は?


清水:「Woman」のデモが送られてきた時は、予想外というかいい意味で裏切られたというか「こうくるか!」という印象でしたね。ジャンルなどの制約はせずに依頼しているので、リード曲は藤村さんの得意なゾーンで来るかなと思っていたので。まあでも藤村さんはこれまで提供いただいた楽曲も幅が広いので、ある意味では藤村さんらしいとも思いました(笑)。予想を超えてくるとというらしさも含めて。なので、いわゆるアイドルらしい沸き曲ではないですけど、これまでのStar☆Tにはない曲ですし、新しい挑戦としてこの曲をリード曲にすることに迷いはなかったですね。


――今回も前作に引き続き作詞はすべて清水さんがやられてますね


清水:基本的には私は楽曲制作には関わらず(あるいは1曲くらいにして)プロデューサーとして俯瞰で全体を見たいと思っているんです。前作「ご当地ソング」は全曲ご当地ソングというコンセプトだったので、作詞を他の方にお願いするのは難しいという判断でカバー以外の3曲すべて私が作詞しましたが、本作はそういう縛りはないし、シングル3曲の統一のテーマのようなものも設定しなかったので、本来なら地元の人に作詞をお願いする、バリエーションを出すためには3曲それぞれ違う人に依頼するってのがStar☆Tのスタンダードだったと思います。


じゃあなんで3曲とも自分で作詞することにしたのか?実は、、、藤村さんと深井さんの曲なら作詞やりたいなって思っちゃった、というのが答えです(笑)。プロデューサーよりもクリエーターの気持ちが強く出ちゃった。全体のプロデュースとしてとかは考えずにシンプルに“やってみたい”と。藤村さんの「私だけの夢」の作詞は朝空詩珠紅本人で私もサポートしたんですがいい詞ができた手ごたえがあったし、深井さん曲は評価いただいている「2021」の次曲になるし、そういう意味でも自分でやりたいなと。


――「Woman」の作詞について。“女性”をテーマにした理由は?


清水:今回は事前のコンセプトはありませんので、音源デモを聞いてから詞の方向を決めていこうと思ってました。先にあれこれ考えないようにして。なのでデモの初聴ってとっても大切なんですよね。先入観を持たず、なるべく素で聴くようにして。いい加減に聴くと色々考えちゃうんです、で耳って制度化されやすいので、一度イメージが付いてしまうとそれがなかなか拭えなくなってしまう。デモを2回か3回聴いて、もうそれ以上は聴かないようにして。


「Woman」のデモを聴いた時は(まだ「Woman」というタイトルは付いてないですが)、やっぱりストリングスの印象が強くて、ふっとSMAPの「Dear Woman」という曲に繋がりまして。「♪ようこそ日本へ~」って曲ですね。そこからジョン・レノンの「Woman」もその向こうに見えて。ああ、女性をテーマにしようって思って。藤村さんにもデモをもらった最初の返事で「女性をテーマにしようと思いますが、、、」って言ったと思います。だからこの曲はタイトル先ですね、まずはタイトルを「Woman」にすることを決めてしまった。


それで、「Woman」がつくタイトルの曲ってたくさんありそうだなって思ってちょっと調べたんです。どんな内容の傾向があるだろうと。確かにたくさんあったんですが、大きく2つに分かれてて、男性の側から見る女性賛歌的な、女性は偉大だ的なものか(SMAPDear Woman」もジョン・レノン「Woman」もこっちの系譜ですね)、もう1つは女性が歌うことが多いんですが、女の情というか性(さが)というか、どろっとした女の情念的な内容か(演歌のイメージですけど、ロックポップスでも案外こっち系の曲も多いです)。そのどちらかって感じで、真ん中がほとんどなくて。


なので、どっちかに偏るのは嫌だなと、どちらも内包して全部ひっくるめての女性を描きたいなと思って。でもそれってすごく難しそうだなぁと、一旦ページを閉じた(笑)。10月末か11月頭くらいにデモをもらいましたが、2~3週間手をつけずに頭の中だけで転がしてました。福岡遠征と台湾遠征もあったりして忙しかったこともあって。


――実際に書き出したのは、、、?


清水:11月も終わりに近くなってもうやらないととなって、ババッと書きました。頭の中で作り上げて一気にという感じではなく、ふわっとイメージだけでフレーズなんかが出来てるわけでもなく、サビをちょっと書いて、Bメロもちょっと書いて、Aメロも書いて、、、と少しずつ全体を埋めていって、それからいろいろ言葉を入れ替えたりして、パズルみたいにはめていった感じです。なにか女性に関する名言を入れるのはどうかなって思って調べたりとか。「しなやかに」「たおやかに」「はなやかに」とか羅列してとか。フランス語入れてみようとか。


――強いメッセージ性がある歌詞ですよね


清水:系譜は前作「ご当地ソング」に続く社会的なメッセージソングだと思います。ただ「ご当地ソング」ははっきりとしたメッセージの芯がありますが、「Woman」はそういうわかりやすいメッセージ感というのはないので、聴く人にわかってもらえるかな、、、という不安はありました。


女性解放の名言をインサートしていいのか?とか、ジェンダーレスとかLGBTがクローズアップされてる時代に“女性”をテーマにすることの矛盾ももちろん考えましたし。男女同権がまだまだ進んでないことは(特に日本では)歴然ですが、ステレオタイプにそれだけを一方的に主張するやり方には違和感がありますし、逆に巷にあふれる“女性の恋愛観はこれ”とか“気遣いのできる女性はモテる”的な無自覚な情報発信にもやっぱり違和感がある。その曲をアイドルグループが歌うことで発生する意味もあると思いますし。


「原始、女性は太陽だった」は平塚雷鳥の言葉、「人は女に生まれない、女になるのだ」はボーボワールの言葉ですが、ボーボワールの言葉は女性差別に関する告発ですよね、元々はそういう発言だったわけですが、現在、特に日本では女性肯定のいい言葉に受け取られている感もある。読み替えているというか。「Woman」の中でもあえてそういうミスリードしてますし。


なので、メッセージソングと言いつつ、1つの明確なメッセージがあるわけではなく、聴く人に委ねるというか、それぞれ感じとって欲しいとしか言いようがないです。リリースイベントの時の曲紹介でも「○○な曲です」って説明がなかなかできなくて。「女性賛歌です」でもないし「女性の権利向上を」でもないし「女性らしさを歌います」でもない、一言で説明することができないんですよね。なのでしいて言えば「この曲何が言いたいの?」って感想が正解です(笑)。でもそこから聴く人それぞれで解釈をしてもらえればいいかなと思ってます、女性について、性差について、またそこから見える社会やまわりやご自身について考えるきっかけになればいいかなと。


最後に豆知識的な情報を。2番後のリフのフランス語は歌詞カードにも訳は入れませんでしたが、平塚雷鳥ボーボワールの言葉のフランス語に「C‛est la vie それが人生さ!」をくっつけたものです。


後半「ドッペルゲンガー」「私の好きな人には、好きな人がいる」について はこちら


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